大学病院退職にあたって 古矢丈雄先生

更新日 2025.4.13

古矢丈雄 (平成13卒)

このたび令和7年3月31日をもちまして14年間勤務しました千葉大学を退職致しました。これまでお世話になりました先生方、病院関係者の方々にこの場を借りて心より御礼申し上げます。

 

尊敬する村上正純先生、望月眞人先生、山崎正志先生、大河昭彦先生、國府田正雄先生の直接のご指導の下、脊椎脊髄病学の臨床を学びました。大学の責務として難治性疾患に果敢に挑戦し、任期中多くの高難度手術を執り行いました。特にライフワークである脊髄疾患については、術前の綿密な手術計画に加え、術中判断を重んじ、攻め・撤退の判断力をつけること、手術のヤマを認識する大切さを自身で日々鍛錬しつつ、後輩にも説いて参りました。確実に難治が予想される症例にも患者メリットが少しでも期待できれば積極的に手術を行って参りました。在任中、大きなトラブル無く大学臨床を終えることができたのは多くの先輩方、同輩・後輩のサポートのおかげと考えております。

画期的な発明はありませんでしたが、時代のニーズに合わせ手術の低侵襲化 (軟部組織温存)や簡略化 (インストゥルメンテーション固定範囲の縮小、固定無し手術への探求)に注力致しました。また、2016年より骨転移外来、骨転移キャンサーボードを開始いたしました。臨床研究では多施設共同研究の重要性を認識し、靭帯骨化症班会議分担研究、日本脊椎脊髄病学会プロジェクト研究、若手脊椎集団JASA共同研究等々、学閥を超えた多施設共同研究に積極的に参加し、若手にプロジェクトリーダーを任せ次世代のリーダー育成にあたりました。

國府田正雄先生、橋本将行先生から引き継いだ脊髄再生に関する基礎研究は、脊髄圧挫損傷モデルを用いた従来の研究から、非骨傷性脊髄損傷モデルを用いた、より臨床に即した研究に発展させました。また胸髄損傷モデルが主流であった本領域に頚髄損傷モデルを積極的に取り入れました。脊髄損傷だけでなく、圧迫性脊髄症についても独協医科大脳神経外科の金彪教授のモデルを利用させていただき、新規薬物治療の研究や脊髄症発症のメカニズムについて研究を行いました。

中央の仕事としては大鳥精司教授より抜擢いただき、脊椎関連学会の合同学会 (Spine Week Japan)の学術集会担当理事を担当しています。目下、令和10年までの同学術集会の準備を会長先生方と力を合わせ進めております。また、山崎正志先生より推薦いただきました頚髄症ガイドライン委員会委員を2期務めさせていただいております。現在進行形で新しいガイドラインの発刊に向けて準備を行っています。医師主導治験関連で出入りすることとなったPMDA (医薬品医療機器総合機構)の職務は現在も専門委員として現在も時々臨床医の立場から助言させていただいております。

アジア諸国との交流も私のライフワークの1つです。大学在任中に国際頚椎機構日本支部にてアジア・パシフィック交流委員会の副委員長を拝命し、カンボジア、ネパールへの医療支援、若手脊椎外科医の千葉大整形外科への短期留学の受け入れに積極的に関わって参りました。また、錦昌会葉國璽先生からのご支援の下、台湾の整形外科医と千葉大学整形外科の相互交流においても、積極的に交流調整を担当して参りました。

 

私は実は生まれは神奈川県で、大学も新潟と、千葉とは全く縁はありませんでしたが、医局見学時に「何となく」居心地の良さを感じて入局しました。千葉大学整形外科は、私のような千葉大医学部卒でない者にも差別なく平等に接していただき、チャンスを与えてくださいました。一般的な能力であり、取柄はバランス感覚と手術時の体力と患者を診る責任感のみではありますが、なぜかタイミングもあり、本丸に残り最終的に講師職まで全うすることができました。私を育ててくださいました千葉大学整形外科に感謝の念でいっぱいでございます。

 

退職後令和7年4月1日より千葉市立海浜病院、千葉市立青葉病院で勤務しております (兼任)。海浜病院は令和8年秋に新病院移転が決まっており、移転への準備と同時に同院整形外科の再建を任されております。一方、青葉病院は脊椎教育研修施設としての機能を保持すべく、大学で学んだ多くの経験を活かし、若手育成のミッションをいただきました。どちらも大変やりがいのある任務です。定年までの15年を脊椎脊髄病学の発展、次世代の整形外科医・脊椎脊髄外科医の育成、地域医療への貢献に尽力したいと考えております。また、関連病院勤務医として、これまで賜りましたご指導の恩返しとして千葉大学整形外科に微力ながら貢献できればと考えております。引き続きご指導・ご鞭撻のほど、よろしくお願いいたします。

令和7年2月6日開催された講演会の様子

平日にも関わらず100名以上の皆様にご来場いただきました。大鳥教授・病院長にもご多忙の中、ご参加いただきました。また、脊椎の枠を超え、関節外科・手外科の先生、専攻医先生にも多くいらしていただきました。当日ご参加いただきました先生方、看護師様、医療事務様、会を主催いただきました第一三共株式会社にこの場を借りて厚く御礼申し上げます。

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医局送別会

腰椎班・頚椎班の先生方と。千葉大整形脊椎班の未来を担う若手が勢ぞろいしました。

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頚椎脊髄班送別会

晴れた3月の日曜昼間にも関わらず50名の先生方にご参加いただきました。

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手術室看護師様と

長時間手術に加え、整形外科・脊椎特有の臨時手術、緊急手術も快くお引き受けいただき本当にありがとうございました。

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手術を終えて

脊髄手術はいつもこの顕微鏡と一緒でした。

  • 図7